【第七話】 海と山に由来する大地からの熱き恵み。【前篇】
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クロマツの防砂林に囲まれた町民の湯。
メタケイ酸を含む2つの源泉が浴槽に満ちる。
遊佐町吹浦の西浜海岸、道の駅鳥海「海のエリア」のクロマツ林に、2つの源泉が湧き出ています。昭和63年に掘削された「西浜源泉」と、西浜源泉の湯量が毎分400リットルに半減したため、平成16年に新たに掘削された「鳥海源泉」です。鳥海源泉はさらに湯量が豊富で、毎分1,000リットルを超えます。
この2つの源泉を贅沢に楽しめるのが「あぽん西浜」です。
「あぽん」は赤ちゃん言葉で「お風呂」、または、お母さんと幼子が一緒にお風呂に入ることを指す遊佐町の方言。
広々とした内湯に注がれるのは、黄褐色で日によって緑色を増す西浜源泉、露天風呂には黄土色の濁り湯、鳥海源泉が供されます。泉質は海水の成分に似たナトリウム-塩化物泉(旧泉名:食塩泉)で保温効果が高く、鳥海源泉のほうはさらにヨウ素イオンが含まれているとか。
泉質のもう一つの特徴は、共通してメタケイ酸が多く含まれていること。メタケイ酸は、通常1kgに50mg入っていれば美肌効果があると言われる成分です。西浜源泉、鳥海源泉はともになんとその2~3倍。塩化物泉の「温まり湯」「熱の湯」であるとともに、肌に柔らかい美肌の湯、美人の湯であり、アトピーにも効く「薬いらずの湯」としても親しまれています。
地中に封じ込められた古い海水、化石海水が起源で、海に近い温泉は現在の海水が混入している場合もあると言われる塩化物泉。温泉の熱源も活火山である鳥海山に由来するとも考えられる、あぽん西浜の湯。雄大な鳥海山を目の前に、日本海間近の波音が聞こえそうな温泉に浸かっていると、遊佐町らしい大地の温もり、海と山の熱き恵みが身体の芯まで染み入るようです。
「あぽん」の意味するその名の通り、開湯以来30年に渡り町民に愛され続けています。場所柄、鳥海山の登山客、海釣り客、隣接する西浜キャンプ場の家族連れなどにも人気ですが、脱衣所や浴場には今日も朗らかな地元言葉があふれます。
後篇に続く