【第一話】 遊佐。山と海を巡る物語。【後篇】

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    日本海に沈む夕陽の絶景に言葉を無くす。
    海が与えてくれるものを想う、その苦労も恩恵も。

    遊佐の町を上空から眺めると、海岸線と平行して2本、緑に彩られたベルト地帯が切れ目なく続いていることがわかります。これは「防砂林」と呼ばれ、強烈な海風によって飛ばされる砂や塩害から、家や農地を二重に守るクロマツの人工林。江戸時代に遊佐町から植林が始まり、庄内地方全域に延長されて今に至ります。

    この2つの防砂林に挟まれ南北に延びる国道7号線を北へ向かい、吹浦港の手前で345号線に分岐すると唐突に海沿いに出ます。絶好の夕陽ポイントに車を停めると、太陽は少し膨らみながら水平線に溶け出していました。7,000年前にここに暮らした人々も、恵みの海と山に感謝し同じ情景を眺めたことでしょう。

    悠久の時を超えた琥珀色のグラデーションで満たされる空が視界を覆います。ふと後ろを振り返れば、先ほどまで冠雪を薄紅色に染めていた鳥海山のはるか上に、月が微笑んでいるのでした。

     
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