【第四話】 暮らしに寄り添う川の流れを追う。【後篇】

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    町のほぼ全域を潤す母なる川。
    暮らしを育む流れが月明かりに映える。

    映画「おくりびと」(2008年公開)をご覧になった方は、残雪をいただく雄大な鳥海山を背景に、主人公の大吾がチェロを奏でるシーンを覚えているでしょうか。そのロケ地となったのが月光川です。月光川は「がっこうがわ」と読み、遊佐蒸溜所から目と鼻の先です。

    月光川があって日光川はないの?と思いませんか。あります。「日向川」と言います。2つの川は、鳥海山に祀られる薬師如来の左右に控える日光・月光菩薩に見立てて名付けられたとされ、上流部では、鳥海山参拝の一合目に位置する大物忌神社蕨岡口之宮(おおものいみじんじゃわらびおかくちのみや)の南北を、守り寄り添うように並行しています。

    遊佐の町を東西に横切り、その後北へ流れを変え、吹浦から日本海に注ぐ月光川。先にお話した牛渡川、洗沢川も、月光川の支流にあたります。町内の多くの湧水とともに、町の暮らしを支え、文化を育んできました。町の人々にとって、鳥海山を父なる山とするなら、月光川は母なる川と呼ぶべきかけがえのない流れ、大きな自然の恵みです。

    月光川を河口部から遡るとすぐに、昔ながらの川の姿に出会うことができます。所々に河川公園がつくられるほかは河畔を草木が覆い、多種の魚たちの住処となっています。
    流路は町内を流れる川で最も長く、といってもわずか17.4km。それだけ、鳥海山と日本海が間近にあり、その豊饒な土地に遊佐の歴史が育まれてきたことを物語っています。

    夕暮れが次第に夜の闇に包み込まれる時刻。
    その清らかな流れは神を宿したかのように神々しく、ほのかな月明かりの中に輝いていました。

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