【第二話】 天地を旅する命の水元─みなもと。【後篇】

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  • 写真:滝ノ水/釜磯海岸

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    波打ち際、砂浜に湧き出す鳥海山の伏流水。
    その不思議な光景に見る、大自然の営みの深遠さ。

    神泉の水がある女鹿地区から少し南下した滝ノ浦地区。ここもまた、そこここに湧水が点在し、古くから飲用や洗濯用に利用されてきました。集落の中心にある大島神社境内には、滝のようにどうどうと流れ落ちる地区最大の湧水。「滝の水」と呼ばれ、地区名の由来ともなっています。

     

    日本海の波が打ち寄せる釜磯海岸。夏は海水浴で賑わうその砂浜に、とても奇妙な風景が広がっています。
    あちらこちらに、ボコボコと音を立てるように真水が砂を押し上げて湧き出し、海に流れ込んでいるのです。その様子は、大地を川が削り壮大な峡谷をつくる原始の地球を想像させます。砂浜だけでなく、海中にも数多くの湧水があるのだそうです。

    湧き出す水はすべて鳥海山の伏流水。水が湧き出ている穴に手を差し入れると、腕がすっぽり入るほど深いところもあって驚きます。水温は低く、長く浸してはいられません。昔は、人が入れるほどの湧水があり、海水浴を楽しんだ後の「塩水落とし」としても利用されていたとか。

    標高2,236mの山頂から海抜0mの砂浜へ、長い長い水の旅の最終章は、人の暮らし、新しい物語に引き継がれていきます。

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